合同会社と発起設立株式会社のちがい


(合同会社)

平成18年5月1日に会社法が施行されました。合同会社はこのとき初めて法律に規定された会社です。設立コストや起動性の点で、とても設立しやすい形態の会社といえるでしょう。

 

合同会社を設立する場合、社員全員が株式会社の資本金に代わる出資金を拠出する必要がありますが、この金額については特に定めがなく自由に設定することができます。

 

ところで、有限会社法がなくなくなったのも、同じ日の平成18年5月1日です。これより有限会社は設立ができなくなりました。


当時既に存在した有限会社は、自動的に「特例有限会社」とよばれる株式会社になり、会社法の適用をうけることになりました。(特有有限会社の詳しい内容については、今回は割愛させていただきます。)

 

(発起設立株式会社)

株式会社には発起設立と募集設立の2つがあります。


発起設立は、発起人が1人でも設立することができ、会社の規制も比較的緩いことから、募集設立より手軽に設立できる株式会社となっています。

 

出資をした発起人は、会社設立後に株主となると同時に取締役などの役員になって会社を運営していくことも可能です。

 


初期費用


合同会社と発起設立株式会社の初期費用の違いは、定款認証手数料と登録免許税の額です。

 

商業登記をする際にかかる登録免許税は、合同会社の場合、発起設立株式会社の半額以下の金額となっています。

 

また、合同会社は公証役場における定款の認証手続きを省くことができますので、その分の手数料がかかりません。

  

したがって、初期費用の面では、発起設立株式会社より合同会社の方が、一層、設立しやすいといえるでしょう。

 

(合同会社)

・定款作成の収入印紙代 40,000円(電子定款は無料)

・その他(定款の謄本手数料)約2,000円(1頁につき250円)

・登録免許税 60,000円  合計 約10万2,000円

 

(発起設立株式会社)

・定款作成の収入印紙代 40,000円(電子定款は無料)

定款認証手数料 52,000円

・その他(定款の謄本手数料)約2,000円

・登録免許税 150,000  合計 約24万4,000円

 


ランニングコスト


合同会社と発起設立株式会社の費用を比較してみましょう。


以下は毎年かかる費用と、登記の変更を必要とする事態が生じたときのにかかる費用の比較です。


2つの費用を合わせた金額は、合同会社が約7万円、発起設立株式会社は約13万円となり、合同会社の方が低くなっています。

 

(合同会社)

(1)毎年かかる費用

・法人住民税(均等割)約70,000円(都道府県・市区町村によって異なる)  合計  約7万円

 

(発起設立株式会社)

(1)毎年かかる費用

・決算公告費 約60,000円

・法人住民税(均等割)約70,000円(都道府県・市区町村によって異なる)  合計 約13万円

 

(2)登記変更時にかかる費用

・重任登記費 10,000円(2年毎+4年毎)※ただし資本金1億円超~3万円

・登記変更費 30,000円

 

 

※法人住民税・・・地方税の一種。法人である以上は赤字でも黒字でも支払う必要がある税金です。

※決算公告費・・・株式会社における決算を公告する義務にかかる費用。株式会社の場合は必ず行わなければなりません。

※重任登録税・・・取締役が2年、監査役が4年の満期毎に、役員に変更がなくてもかかる登記費用です。

※登録変更費・・・会社名、会社の本店所在地を変更した際にかかる登記変更費用です。

 

⭐︎合同会社の場合は、決算広告費や重任登記費が不要です。

 


機関設計


合同会社の場合は取締役・監査役・その他の役職はありませんが、他方、発起設立株式会社の場合は、会社法に記載された機関(取締役会・監査役会・各種委員会等の機関)を会社法の規定に従って組み合わせ、役職者を決める必要があります。

 

(合同会社)

社員(=出資者)全員が代表権・業務執行権を有する

 

※ただし、定款に定めることにより一部の社員のみの権限とすることができる。

※社員(出資者)の意思決定は出資額に関係なく、原則、頭数の過半数で決議します。

 

(発起設立株式会社)

・取締役(業務について決定する権限があり、執行をする。発起人と兼ねることができる)を必ず置かなければならない。

・株主総会(設立後の会社の一切の事項を決定する権限を持つ意思決定機関)を必ず置かなければならない。

 

※株主総会の意思決定権が出資額に比例する。

※定款に定めれば、その他の役員を置くことも可能。

※取締役会設置会社と非設置会社では、取締役の権限が異なります。

 


利益配分


 合同会社と発起設立株式会社では、利益配分の方法が異なり、合同会社では出資額に関係なく定款で自由に定めることができますが、発起設立株式会社では出資額に比例した人利益配分によることとなっております。

 

(合同会社)

出資額に比例しない(定款で利益配分を自由に定めることができる) 

 

(発起設立株式会社)

出資額に比例する

 


役員の任期


 合同会社では社員の任期はありません。

 

一方、発起設立株式会社の場合は、譲渡制限株式を発行している会社は10年、普通株式を発行している会社においては、取締役の任期が2年、監査役は4年と定められています。

 

(合同会社)

社員の任期なし

 

(発起設立株式会社)

・譲渡制限株式会社=取締役2年 ※ただし定款に定めることにより10年まで延長可能。

・通常の株式会社=取締役2年(監査役は4年)

 


出資・株式による資金調達


 1.設立時の出資金や資本金

 

平成27年1月に、会社法が大きく改正されました。

 

それまでは、資本金が300万円あれば設立することができる”有限会社”がありましたが、この改正をさかいに有限会社を新規に作ることができなくなりました。その代わり株式会社の設立が容易になり、例えば資本金が1円で会社が設立できるようになりました。

 

しかし、1円で株式会社が設立できるからといって、資本金を1円で設立することが会社にとって望ましいかといえば、そうとも言い切れません。出資金や資本金の額は、会社の責任財産の額ともいえます。商業登記事項証明書に資本金が1円と記載されている会社と100万円と記載されている会社があるとしたら、信頼度が高いのは当然後者といえます。合同会社の出資金も株式会社の資本金も、会社の事業規模などに合わせて適切な金額の準備が必要です。

 

2.出資金・資本金の追加資金調達

合同会社で出資金により追加的な資金調達をする場合は、新たな出資者を募り資金調達を行います。その際に、新たな出資者が出資をする場合は、その新たな出資者も社員となり経営に参画することになります。

 

他方、発起設立株式会社で資金調達をおこなう場合に、定款に定める範囲で新たな株式を発行することがあります。この新たな株主は株主総会の議決権を得ますが、役員に選任されなければ、経営に参加することはありません。

 

(合同会社)

出資者=経営者(業務執行者)

 

(発起設立株式会社)

1)出資者(株主)=経営者(業務執行者)

2)出資者(株主)≠ 経営者(業務執行者)

 


認知度


 そもそも株式会社は、最も認知度の高い会社形態です。

 

一方、合同会社は、比較的歴史の浅い会社形態であり、認知度は株式会社のほうが高いといえます。しかしながら最近では、Apple、Google、AmazonJapan、ファイザー・フォールディングス、デトロイト・トーマツといった大型有名企業も『合同会社』の会社形態を採用しており、徐々にその認知度は上がっています。

 

(合同会社)

有名企業も採用しはじめ、徐々に認知度があがって来ている。

 

(発起設立株式会社)

認知度が高い会社形態。

 


設立フロー


合同会社と発起設立株式会社の設立フローを比較してみましょう。

以下は、発起設立株式会社のフローとなりますが、合同会社の設立のについては、赤字部分を省略できます

  

(合同会社・発起設立株式会社設立のフロー)  

 

1.社名、本店所在地、事業の目的、資本金その他の会社概要を定める

作りたい会社のイメージ具現化し、会社概要を定めましょう。

    

2.『発起人会』の開催

資本金を出す者や会社の設立手続きを行う発起人が集まり、1.の社名、本店所在地、事業目的等の内容を決める会議です。

※1人で設立する場合・定款で基本事項を定める場合は不要となります。

※合同会社においては省略することができます。

    

3.許認可が必要な場合は、許認可申請手続きに着手する(許認可が必要な事業の場合)

 会社の業種や目的によっては、事前に役所の許認可を得ておく必要があります。どのような許認可が必要か確認し、必要な許認可書類の作成に着手します。

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4.助成金、補助金、制度融資等の申請を検討する

事業開始当初は、会社の資本金とは別に、ある程度の運転資金を確保しておく必要があります。しかし、その全てを自身の貯蓄で賄うには長い時間がかかり、折角のビジネスプランが劣化してしまう可能があります。また、創業当時は銀行のプロパー融資もシビアになりがちです。制度融資や助成金、給付金、補助金などの申請も一考する余地があります。

     

5.会社の定款の作成と認証

会社の定款を作成し、本店所在地にある公証役場で定款認証を受けます

※定款の作成については『合同会社』も行わなければなりませんが、公証役場における認証については省略することができます。

     

6.資本金の払い込みをする 

発起人の金融機関口座に資本金を払い込みましょう。

     

7.『設立時役員』の選任

出資金の払い込みが完了したら、再び『発起人会』を開き、取締役や監査役等の役員を選任します。

 ※合同会社においては省略することができます。

 

8.『取締役の調査』

出資の払い込みが完了しているか、手続きが法令や定款に違反していないか等の調査があります。

 ※『合同会社』においては省略することができます。

    

9.法務局にて設立登記をする

 登記申請が完了するまでの期間は、合同会社の場合2~3週間、株式会社の場合は概ね3~4週間を要します。

なお、登記を申請した日が、会社の設立日になります。